野村正七地図賞
【受賞者】
西川 治 名誉会員(東京大学名誉教授)
【受賞理由】
日本学術会議会員として「国立地図学博物館」(仮称)設立勧告(1988年)を主導するとともに、「地理情報科学の深化と研究教育組織に関する研究」を進め、勧告の一部を東京大学空間情報科学研究センターの設立として結実させることに貢献した。
【補足説明】
「国立地図学博物館」(仮称)設立の提唱は、大学における地図学の研究・教育体制が極めて不備であること、国内外で毎年生産される各種の地図・画像情報は膨大な量にのぼるが、それらをデータベース化して、広く一般の利用に供する機関が皆無に等しいこと、海外地域情報の蓄積に関しても欧米諸国等に比べて大きな格差があること等を踏まえてのことであった。以下は、東京大学空間情報科学研究センターのホームページから抜粋。
センター設立の運動は、十数年前に遡りますが、それが顕在化するのは、1988年の日本学術会議第104回総会の決議に基づく勧告、「国立地図学博物館」(仮称)設立の勧告時と言えるでしょう。この勧告の内容は、大きく分けると二つあり、一つは、地図をはじめとする空間情報関連の博物館を設立すること、二つは、地図「学」博物館とあるように、地図に関連する新たな学問(当時の言葉では「新地図学」)を研究する研究機関を設立することでした。 この勧告の実現を目指し、5年余の間に渡って全国的な運動が展開されました。しかし、当初の勧告通りのセンターを実現するのは極めて難しいという状況に突き当り、運動方針の建て直しをせまられました。そこでセンターの機能を、研究機能を中心とし、博物館機能を切り離したセンターを目指そうという運動の転換がはかられました。この転換時にあたり、勧告にあった「新地図学」は、より高く広い視点から見直しが図られ、「地理情報科学」という新たな学問が提唱されました。この学問を創生し育てるには、センターをどのような研究組織にし、どのような研究をすれば良いのかが大きな課題となりました。幸いにも、(旧)文部省科学研究費補助金(基盤研究(A))を得て、「地理情報科学の深化と研究教育組織に関する研究」(代表:西川治教授)で、これらの課題について3年間(1994-96)に渡り研究が進められました。 この研究により、センターの研究組織、研究内容が具体化され、センターの設立を実現する大学として、東京大学が適切であるという判断が下されました。これに基づき東京大学にセンターを設立しようという運動が開始されます。まず、1996年「全国地理情報科学研究センター設立準備委員会」、その下部組織である「東京大学地理情報科学研究センター設立準備会」が設立されました。